Practice-Based Research(診療に基づく研究)の推進
当教室では、わが国で先駆けてPractice-Based Researchを推進しています。Practice-Based Research(PBR:診療に基づく研究)は診療上の疑問に答え、研究によって得られた知見を診療現場へフィードバックすることを目的とする研究モデルです。PBRの研究実施場所は、開業医・診療所・病院などの臨床現場です。PBRは臨床家が日常診療で直面する疑問に基づいて研究テーマを立案し、臨床疫学研究者と協力して実施されます。リアルワールドの診療現場で研究が行われるため、その結果はすぐに臨床家にフィードバックされ、日々の臨床にいかされます。PBRの促進により、臨床直結型のエビデンスが構築され、Evidence-Based Dentistry (EBD: 根拠に基づく歯科医療)の普及とEvidence-Practice Gap (エビデンス―診療ギャップ)の改善が可能となります。その結果、エビデンスの確立された治療・ケアが普及し、治療の標準化が進むことで医療の質の向上・国民の健康増進につながります。
米国におけるDental Practice-Based Researchの潮流
米国ではNIH(米国国立衛生研究所)の主導により、2005年からPBRを促進するためのネットワークであるPractice-Based Research Network(PBRN)が構築されてきました。現在ではアラバマ大学・フロリダ大学を中心として全米にわたる3,000 人以上の歯科医師が参加するNational Dental PBRN が構築されています。PBRN の規模としては世界最大です。現在、National Dental PBRN により、歯科開業医の診療上の疑問を解決するための全米規模の多施設共同研究が行われ、数多くのエビデンスを発信しています。
日本におけるDental PBRNの構築
当教室では、本邦初の国際的なPBRNである「Dental PBRN Japan (JDPBRN)」を運営し、臨床家と共に研究を実施しています。米国National Dental PBRNとの国際共同研究をはじめとして、現在以下の研究を実施しています。
現在実施中の主な研究
- 日米国際共同研究Study 1「う蝕の診断と評価に関する研究」
- 日米国際共同研究Study 2「顎関節症による疼痛の初期治療に関する研究」
- 日米国際共同研究Study 3 「Evidence-Practice Gap に関する国際比較研究および教育介入研究」
- 日米国際共同研究Study 4「エビデンス-診療ギャップの発生機序解明および改善方策立案のための国際比較研究」
- 国内研究Study1「患者が必要とするPractice-based Researchとは」
- 国内研究Study2「診療ガイドラインの利用に関する研究」
日米国際共同研究協力者
Prof. Gregg H Gilbert DDS, MBA, FAAHD, FICD
Director of the National Dental PBRN
Professor & Chair, Department of Clinical and Community Sciences, School of Dentistry, University of Alabama at Birmingham, USA
Prof. Valeria V Gordan DDS, MS, MS-CI
National Director of the Practitioner Training & Education Component and Director of the South Atlantic Region of the National Dental PBRN
Professor and Director for Practice-based Research, Department of Restorative Dental Sciences at the University of Florida College of Dentistry, USA