公立大学法人 九州歯科大学 臨床疫学分野

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教育内容

国際的視点を持つハイブリッド型リーダー歯科医師の育成

1990年にEBM(科学的根拠に基づく医療)がカナダのマクマスター大学で提唱され、この概念は歯科領域では1990年代中盤にEvidence-Based Dentistry (EBD) として登場しました。EBDは2013年より米国での歯学教育プログラムにおいて必須の教育内容となっていますが、本邦の歯学教育においては普及には至っておりません。よって当教室では体系的なEBD教育プログラムの構築を進めています。EBDを実践するにあたっては、世界の最新情報を得るために英語論文を批判的に読解する能力が求められます。よって国際的な視野に立って最新の歯科医学情報を常に追い求め、最善の治療・ケアを目の前の患者さんに提供するというマインドを学生諸君に醸成していきたいと思っています。

さて、EBDの普及・推進が求められる一方で、実際にEBDを実践しようとしても疑問の解決に必要なエビデンスが見当たらないことにしばしば直面します。これを解消するためには、日常診療における疑問を解決すべく臨床疫学研究を実施してエビデンスを蓄積する必要があります。よって、これからの歯科医療人は既存のエビデンスを活用してEBDを実践し、さらにエビデンスが不足している場合は自身で臨床疫学研究を計画・実施してエビデンスをつくり出す能力を有していることが望ましいと考えています。

以上のことから、当教室では「国際的視点を持つハイブリッド型リーダー歯科医師の育成」を教育理念として掲げています。ハイブリッド型歯科医師とは「研究マインドに基づき、日々の臨床に取り組む歯科医師」すなわちEvidence-Based Dentistry(根拠に基づく歯科医療)を実践し、必要に応じて自らエビデンスを発信する歯科医師を指します。さらに国際的な視点で考え、組織や地域のリーダーとして活躍する人材の育成が不可欠であると考えています。

上記の教育理念に基づき、当教室では学部教育においてEBDおよび国際性の涵養を目的とした教育科目を提供し、大学院教育では研究デザインを中心とした臨床疫学に関する教育科目を提供しています。歯科医療人がエビデンスを「つかい、つくる」文化が、本邦において醸成されることを目指して日々の教育に取り組んでいます。

国際的支店をもつハイブリッド型リーダー歯科医師

学部教育担当科目

「Evidence-Based Dentistry」歯学科4年次生、口腔保健学科3年次生

Evidence-Based Dentistryを実践する歯科医療人に必要な知識と応用力の涵養を目的とする。歯科医学文献を検索および批判的吟味し、科学的根拠に基づく診療の実践力を養う。臨床疫学・臨床統計学の基礎知識を身につけ、さらに国内外の診療ガイドラインの検索及び読解を行う。

「国際歯科医学概論」歯学科4年次生、口腔保健学科3年次生

「Think globally, act locally(国際的な視野で考え、現場から行動する。)」を実践する歯科医療人に必要な国際性の涵養を目的とする。国際的コミュニケーション能力を高め、国際社会における日本を取り巻く環境や海外の歯科医療の状況について学習する。

「研究室配属」歯学科2年次生

研究に対する理解を深めリサーチマインドを持つことを目的とする。研究室配属を通してリサーチを行っている研究者としての教員と接し、歯科医学に対する科学的な見方・考え方を養ってもらう。

「国際歯科医学実習」歯学科3・4年次生、口腔保健学科3年次生

本学と連携協定を締結している海外の歯科大学・歯学部において講義・実習の見学ならびに国際交流を体験する。

大学院教育担当科目

「臨床疫学Ⅰ」

臨床疫学の基礎的内容を学習し、臨床疫学の各種研究デザインについて理解する。また、それぞれの研究デザインに関する論文を批判的吟味することで、理解を深める。これによりEvidence-Based Dentistry(EBD)の実践力も養う。

「臨床疫学Ⅱ」

本科目では、臨床疫学の専門的な知識および臨床疫学研究を実践する上での応用力を養う。また各自のリサーチクエスチョンに基づいて研究デザインならびに統計解析デザインを立案し、研究プロトコールを作成するための実践的能力を養う。

「臨床疫学Ⅲ」

本科目では、様々な臨床疫学研究の応用例について理解を深め、歯科領域における研究事例について学ぶ。また、国際的な臨床疫学研究について学び、Practice-Based Researchの意義や方法論についても理解する。

「臨床疫学演習」

臨床疫学分野で行う研究内容・成果の発表会に参加し、そこで行われる討論および質疑応答を通して、研究の内容理解を深める。担当教員をはじめとする発表会参加者より受けたフィードバックに基づいて自身の研究を見直し、研究の質を高める。

「臨床疫学講究」

臨床疫学および自身の研究テーマに関連する最新の動向を理解し、論文を精読する。担当学生は論文の概要について資料を準備して発表を行い、質疑応答を通して理解を深める。

【選択科目】

「臨床研究デザインⅠ」

臨床研究の基礎的内容を学習し、臨床研究デザインについて理解する。また、各自で考えた診療現場における疑問に基づいて文献を検索し、選んだ論文を批判的に吟味してプレゼンテーションを行うことで、Evidence-Based Dentistry(EBD)の実践力を養う。

「臨床研究デザインⅡ」

臨床研究の専門的な知識および臨床研究を実践する上での応用力を養う。また、演習では各自の診療上の疑問に基づいて研究プロトコールを作成する。最後に、研究プロトコールの発表会を行う。

教育講演活動

  1. 倫理審査前に押さえておきたい臨床研究デザインの基本. 第62回秋季日本歯周病学会学術大会 倫理委員会企画講演、2019年10月、福岡.
  2. 臨床疫学研究入門―研究が始まるまで―.平成28年度神奈川歯科大学FD講演会、2016年8月、神奈川.
  3. 世界のエビデンスを臨床にいかす―ハイブリッド型歯科医師の育成―.平成28年度北海道大学歯学部同窓会関西支部学術講演会、2016年7月、大阪.
  4. あなたも世界の臨床研究者に.京都大学MCR開講10周年記念シンポジウム、2016年3月、東京.
  5. Evidence-Based Dentistry & Practice-Based Research: Lessons learned in Japan. University of Florida College of Dentistry RDS seminar, November 2015, Florida, USA.
  6. エビデンスを創る.第142回日本歯科保存学会春季学術大会シンポジウムⅣ「EBMは歯科臨床を変えてきたか?―来る10年への針路を考える―」、2015年6月、福岡.
  7. Essential competencies for the new Japanese dentists: toward outcome based dental education. The 3rd Asia-Pacific Conference in Fukuoka, January 2015, Fukuoka, Japan.
  8. What is the competency for the new dental graduate? The Kyushu Dental University Centennial Dental Education Conference, May 2014, Fukuoka, Japan.
  9. The current status and future direction of dental education in Japan. The 2nd Asia-Pacific Conference in Fukuoka, January 2014, Fukuoka, Japan.
  10. 現場から世界へエビデンスを発信―ハイブリッド型歯科医師の育成―. 第32回日本歯科医学教育学会総会・学術大会 教育講演、2013年7月、北海道.
  11. Evidence-based dentistry and dental practice-based research. 2nd Asian Conference of Dental Educators and Researchers, March 2013, Islamabad, Pakistan (via Skype).
  12. Assessment and enhancement of self-efficacy in patient and dental education. University of Michigan, School of Dentistry Scholars Program in Dental Leadership Seminar, June, 2012, Ann Abor, USA.
  13. 歯科診療からエビデンスを発信-Dental Practice-Based Research-. 第43回北海道大学歯学研究科・歯学部FD講演会、2012年3月、北海道.

お知らせ

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TEL: 093-285-3022 FAX: 093-285-3170 E-mail: clinical@epidemiology.jp
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